気まぐれブログ

上杉昇さんの曲も想いも沢山の方に伝えたい𓂃 .⋆

気まぐれブログ 上杉昇さんの曲も想いも沢山の方に伝えたい

【ライブレポート】上杉 昇、バラエティに富んだ驚きと新鮮味あふれるアコースティック・ツアー【文◎舟見佳子 写真◎朝岡英輔】

www.barks.jp

2022年8月~12月にアコースティック編成による全国ツアー<SHOW WESUGI ACOUSTIC TOUR SPOILS 2022-2023 #1>を敢行。2023年は2月~5月に同じスタイルのツアー<SPOILS 2022-2023 #2>で全国7ヵ所を廻ってきた上杉 昇。ギター・平田 崇と鍵盤・森 美夏の2人だけをバックに、全編カバー曲が演奏されるという構成で、彼の“歌唱”をじっくり味わえるシリーズライブだ。そのツアーファイナル公演が5月20日、渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて開催された。

youtu.be

本ツアーの開始前に意気込みなどを訊いた時は「ルーツから素直に選んだ曲もあるけど、けっこうチャレンジングな曲や意外な曲もあってバラエティに富んでいると思う。今までまったく唄ってない人の曲や、唄い方としても自分っぽくないものとか、粋なやつとか(笑)」と応えていた上杉。どんな選曲になりどんな唄を聴かせてくれるのか、ワクワクしていた人も多かったと思うが、実際の公演は我々の期待を上回る驚きと新鮮味にあふれたライブとなった。

1曲目は、上杉が以前からファンと公言する平沢進の「庭師KING」(1998年の7thアルバム『救済の技法』収録)。この曲での“庭師”とはいわゆるガーデナーではなく、この世に実りと豊穣をもたらす“耕す者”のこと。そのイメージを具現化するかの如く、力強いピアノとギターのリフ、平田が踏み、バスドラムの音を出すストンプが躍動感のあるビートを刻む。イントロのブレイクでの「エー、イア イー」という歌声で一気に会場の空気を変える様は流石としか言いようがない。ヨーデルでもなく民謡でもなく、宇宙に共鳴するような響きの発声。ファルセットを駆使し、音程も大きく上下に飛ぶメロディの難曲だが、艶やかなボーカルで見事に歌い上げた。

続いて、これまでも上杉が複数カバーしている、さだまさし中島みゆきの楽曲。「祈り」(さだまさし1983年のアルバム『風のおもかげ』収録)は、時代を越えて愛される美しいメロディが印象的。サビ部分を地声とファルセットで歌い分けるなど、細やかな技術に裏打ちされた表現力も彼らしい。続く「ローリング」(1988年のアルバム『中島みゆき』収録)でも、ボーカリストとしてかなり挑戦的な試みを聴かせた。さりげない歌から始まったかと思いきや、Bメロでは細かいビブラート、サビでは唸りも聴かせ、間奏後にはハイトーンシャウトも。そしてラストのサビ一回は再び力の抜けた素直な歌声で締めるという、1曲の中にスキルてんこ盛り。都会に生きる若者の淋しさを描いた物語を多彩に饒舌に表現してみせた。

MCで「自分はデビューからずっとニックネームがなくて、この方の名前を聞くとちょっと羨ましいんですよね……浜省さん」と語ると、すかさず観客から「ウエショー!」と声が飛ぶ。そして演奏されたのは浜田省吾の「もうひとつの土曜日」だ。2022年のアコースティックツアーでも「愛という名のもとに」をカバーしていたが、今回も秀逸だった。オリジナルが癖の強いボーカリストの曲をカバーする場合、モノマネっぽくなってしまう恐れもあるが、この日の「もうひとつの土曜日」は浜省の歌い回しを忠実になぞりつつ、見事に上杉らしい色に仕上げていた。原曲を大事にしたリスペクトも感じられる中に、声質の違いやちょっとした抑揚など、別のシンガーが歌う意味・価値も付加されている。続いて以前、上杉主催のイベント<Japalooza>に出演したという北海道のバンド、BAZARAのインディーズ時代の楽曲「おうお」では、少しダウナーな感じの歌い出しから、確信に満ちた力強いサビへと、起伏のある情感豊かなボーカルを聴かせた。

猫騙というバンドを始めるよりも前の頃、イベント出演のために島原へ船で向かう途中、晴れているのに雨が降っていて、濡れるけど気持ちいいな、みたいな思い出があって。その船の中でこの曲を聴いていました」と紹介されたのは、Coccoの「陽の照りながら雨の降る」。オレンジ色の照明の中、ゆったりしたリズムと穏やかな歌声が会場を包んでいく。上杉が船で味わった気持ちをまるで疑似体験しているような温かな時間だった。

シンガーとして新たな一面を見せてくれたのが、昭和歌謡の代表格とも言える沢田研二の「時の過ぎゆくままに」と石原裕次郎の「粋な別れ」だった。「時の過ぎゆくままに」は、未来も希望もない恋人たちを歌ったアンニュイな曲で、沢田研二(ジュリー)バージョンは1970年代らしい退廃とエロスが漂っていた。が、上杉 昇(ショリー)バージョンはそんな昭和の雑味が濾過されていて、むしろロマンチックさすら感じさせる。「粋な別れ」もムード歌謡の帝王・裕次郎の印象が強すぎるせいかリアルタイムで聴いていた世代にとってはバーやクラブなど大人の社交場的イメージがセットになってしまうのだが、上杉バージョンはやはりそういう艶めかしさがない。ロマンス成分だけを純粋に抽出した感じというか、大人の関係を清廉に歌うのは誰にでもできることではないと思う。

ロマンチックと言えば、前回のツアーでも演奏されていたKODOMO BANDの「Dry Your Tears」は、さらにロマンチック度がアップしていた。ファルセットを生かした美しいメロディのスローバラード。どストレートかつシンプルなラブソングなのだが、上杉の繊細な歌声で真っ直ぐ歌われた時の破壊力たるや。聴いた人の心に刺さりまくること間違いなしだ。また、ギターだけをバックに演奏された浜田麻里の「FALL IN LOVE」(1987年のアルバム『IN THE PRECIOUS AGE』収録)も素晴らしかった。彼女も驚異的な音域を誇るボーカリストだが、この日のカバーはなんと原曲キーで。前半は低い音域で、ギターソロ後の後半はオクターブ上で歌うというレンジの広さで観客を圧倒した。そして、2020年のアコースティックツアー“防空壕”でも演奏された五輪真弓の「ジャングルジム」はピアノのみをバックに演奏。懐かしい子供時代を思い起こさせる、優しく柔らかな歌声に癒やされた。

次のMCでは、ニルヴァーナへの思いを語った。「WANDSの後、常に目標だったバンドがニルヴァーナ。彼らの登場でロックシーンはまるっきり変わってしまった。自分もグランジをやりたくてal.ni.coを結成したけど、日本ではなかなか受け入れられなくて。同じ頃グランジに突っ走っていて、ライバルだと考えていたAIRの曲を唄いたいと思います」と「Crawl」(2000年発表のシングル)を。アコースティック編成でグランジを?と一瞬思ったが、この3人でメタリカをカバーしたこともあったのをすぐに思い出した。森 美夏は力強いコードを叩き、平田 崇はアコギの音をエフェクターで歪ませたリフをはじき出す。サウンド的にも万端となったが、演奏が進むとグランジらしさの真髄は音色ではなくてコードやメロディに宿っていることに気づかされる。明快で大胆な歌メロと意表を突く革新的なコード進行など、グランジの根底にある反骨精神のような部分をはっきり感じたのはドラムレスなればこそだったのかもしれない。

この日の上杉はアースカラーのサルエルパンツにオーバーサイズのシャツを羽織ったリゾート調の衣装だったが、本編ラストはそんな雰囲気にぴったりの開放感ある明るいナンバーを2曲。「沖縄で演奏したことがあって、この曲をやると沖縄を思い出します。また沖縄でこの曲を歌えたらいいなと思います」と紹介されたのは、NOKKOの「TRAVESSIA」。オリジナルはブラジリアン・ポピュラー音楽を代表するミルトン・ナシメントの楽曲で、南国らしいおおらかな空気感が心地よい。そんなグルーヴに乗って、上杉のハリのある歌声が会場を満たしていく。そしてオーラスはBO GUMBOSの「トンネル抜けて」。前回のツアー<#1>では「夢の中」をカバーしていたが、BO GUMBOSの“どんと”は上杉が大好きなボーカリストの一人だ。晩年は沖縄で活動したのち、ハワイで亡くなったという経歴に共感を覚えるのかもしれない。「トンネル抜けて」は海のほうへドライブする場面が頭に浮かぶような軽快なナンバーだが、間奏のピアノソロの途中で上杉は手拍子を促し、観客は手拍子をしながら笑顔で演奏を楽しんでいた。

アンコール曲は、「PIECE OF MY SOUL」。WANDSが1995年にリリースしたアルバムのタイトル曲だが、新録バージョンが最新シングル「世界が終るまでは…」にカップリングされている。ライブ本編ではずっと椅子に座って歌っていたが、この曲はモードが違うのか、立ち上がってスタンドマイクで歌唱。サビ前のフレーズを「ひと思いに消えりゃいいか…」と変えるなど、ところどころCDとは歌い回しを変えたようだ。アウトロ部分でもフェイクを入れたり、ライブならではの崩しやプラス・アルファがあるのもレアな聴き所。最後は椅子に片足をかけ、鳥肌モノのハイトーンシャウトを届けてくれた。

このツアーで先行販売されていたカバー・アルバム『SPOILS #2 Azurite in Granite』もいよいよ全国発売となり、24日のバースデー・イベントでは次なるツアー#3(なんとファンからの事前リクエストにも応える趣向とのこと)や初の全歌詞集刊行の情報が解禁となった上杉 昇、彼の進む道は遥かずっと先まで続いている。

文◎舟見佳子
写真◎朝岡英輔

『SPOILS #2 Azurite in Granite』

2023年5月24日発売
pojjo record OPCD-2231 ¥3,300(税込)
1.「都市生活者の夜」じゃがたら
2.「贖罪」尾崎 豊
3.「愛の唄」オフコース
4.「水のない水槽」山崎まさよし
5.「昭和」長渕 剛
6.「エレーン」中島みゆき
7.「1920」松任谷由実
8.「防人の詩さだまさし
9.「黒の舟唄」野坂昭如
10.「飛ぶひと」山本精一PHEW
11.「夢の中」BO GUMBOS

 

<[ACT AGAINST COVID-19]SHOW WESUGI ACOUSTIC TOUR SPOILS 2022-2023 #3+上杉 昇 初の全歌詞集発売記念トークライブ+先行販売+サイン会>

2023/8/19(土)東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE[LIVE]
開場16時/開演17時
2023/8/27(日)東京・まほろ座MACHIDA[TALK
開場16時/開演17時
2023/9/2(土)千葉・柏Studio WUUTALK
開場16時/開演17時
2023/9/16(土)神奈川・Naked Loft YOKOHAMA[TALK
開場18時/開演19時
2023/9/23(土)愛知・豊橋 THE楽[TALK
開場16時/開演17時
2023/9/24(日)静岡・浜松窓枠[LIVE]
開場16時/開演17時
2023/10/7(土)山形・Noisy Duck[TALK
開場16時/開演17時
2023/10/8(日)宮城・SENDAI KOFFEE CO.[LIVE]
開場17時/開演18時
2023/11/3(金祝)大阪・umeda TRAD[LIVE]
開場16時/開演17時
2023/11/4(土)大阪・梅田Lateral[TALK
開場16時/開演17時
2023/11/18(土)広島・Live Juke[LIVE]
開場15時/開演16時
2023/11/19(日)岡山・城下公会堂[TALK
開場16時/開演17時
2023/12/2(土)静岡・LIVE HOUSE UHU[TALK
開場16時/開演17時
2023/12/3(日)名古屋・SPADE BOX[LIVE]
開場16時/開演17時
2023/12/9(土)神奈川・yokohama LANDMARK HALL[LIVE]
開場16時/開演17時

[LIVE]
前売:6,000円 当日:6,500円(税込/全自由/別途要ドリンク代)
※8/19東京公演、12/9横浜公演のみ全席指定
※全公演終了後アコースティックツアー・オフィシャルブートレッグCD送付

TALK
前売:2,000円 当日:2,500円(税込/全自由/別途要全歌詞集代、ドリンク代。会場限定ポストカード付)
※初の全歌詞集は定価4,000円、ボックス入り上製本予定で、一般発売は2023年末となります

TOUR INFORMATION:ネクストロード 03-5114-7444(平日14:00~18:00)
http://nextroad-p.com


◆上杉 昇オフィシャルファンクラブ